第10回 E&G学生デザインコンテスト

≪総評≫
コロナ禍で、E&G学⽣デザインコンテストも一時休憩をいたしましたが、本年度から再開されることになり、10回という節目を迎えることができました。応募作品の減少などが心配されましたが、以前の通り盛況であり、関係者一同安心をいたしました。本年度の特徴は、部門別では、公共・都市空間のエクステリアへの応募数が多い状況でした。内容として、各部門を通し室内と外部環境とのつながりから、外部空間の緑、まちの中の空間提案、植物や緑を中心とした暮らしや営みの展開と幅広いものが寄せられ、その意味で提案性の高い作品が多かった印象があります。そして、生物を特徴的に意識した作品では、“飛砂防備林”、“竹と竹林”、“土屋根”、“生物と人間の共存”、“地域産業の育成”、“田園景観を保全”、“海、森、街のつながり”というキーワードが見られ、社会的なSDGsの展開が行われている時代性も反映されていることが推察されます。特に最優秀賞は実践をした提案で説得力があり、優秀賞も自然と直接向かい合う提案や関係性を示した構築であり、より積極的な自然と関わるエクステリアの創造や案出として高く評価されたものと考えられます。選外の作品でも、もう一歩深掘りできるとより評価できるものも多く、今後のさらなる提案が期待されます。
審査委員長 堀越哲美
≪「入賞作品紹介・プレゼンテーション」動画≫
最優秀賞
<講評> 実際に作られたもの、その背景、さらにはつくられた空間を使ってのイベントが、プレゼンテーションを通じて、圧倒的なリアリティある実態としての迫力が伝わってくる。近年、自然賛美の建築と自然の関係のデザイン作品が非常に多くなってきている。考え方としては次の時代の、自然との関係の視点の提示はできているものの、多くは実際にどうやって社会の中で成立させられるのか疑問符のつくものが多い中で、この作品は、素材としての竹の習性をしっかり把握した工法で、建築的空間スケールのあるものとして、さらには魅力的形状のものとして、実際に成立させていることがすばらしい。放置竹林の問題は今日、自然生態環境として大きな社会問題である。実際の海外での建築事例にも触れていて、今後の竹の建築資材としての可能性に活路を開くためのきっかけとなるものであるように思える。まさにタイトルの「今、竹について考えるということ」が形になっていることを高く評価したい。 (岡田憲久)
優秀賞
●住空間部門
<講評> 人間生活の根源的な「衣・食・住」において、「育てる・作る・使う」ことと、「生産と消費」が絡み合う暮らしのなかで幸せ、豊かさを創成する意図で計画、提案されている。 住宅の屋外、本計画では特に内部において、ドミノ計画のように、木造の木軸の構造体に水平な床、斜めの床や壁、屋根面を縫うように串刺して、これらの面を土壌化し、植物を植え、「着る、食べる、暮す」に対応すべき植物を植えことで、すなわち綿の生産、食べ物としての植物の生育、観賞用や日陰をもたらす植栽がなされ、「衣・食・住」に関わる屋外的環境が創成されている構想(アイデア)を評価した。 提案されたスケッチは、好印象を抱かせるが、平面図と断面図から読み取れる表現がダイアグラム的レベルであり、空間構成の具体化、設備のシステム、表現・リアリティーの解像度があるとより伝わるプレゼンになったと思われる。(加藤和雄)
●商業空間部門
(該当作品なし)
●公共都市空間部門
<講評> 姫路のモノレールの痕跡は、連続体ではなく断続的で独特のものがある。本作品は、その点に着目し5箇所の痕跡・遺構を、文化公園としてのボリューム整備を行い、それらを意識的につなぐことにより、姫路のまちの新たなる再興を提案している。これらのモノレールの痕跡を都市のキズと称しながらも、暖かい目で見ることによって、都市の中の「盛場」としての場の提供・機能の付与を行い、姫路の新たな動線や市民・観光客を含めた交流を生み出す基地を創造しようとしたものと考えられる。その手法は、遺構の意味を読み取ることから、形状の提案につなげ、地下から地上そして空中へと続く空間をエクステリアとして都市内に配置し、それぞれが呼応する意識の連続性を醸し出している。その意味で、都市のキズを都市再生の芽として捉え、それを木や花のように育てていくという今後に繋がり、そして他地域でも展開可能なデザインを提案したものとして高く評価できる。(堀越哲美)
●公共都市空間部門
<講評> 「白砂青松」という言葉で代表される我が国の美しい海辺の景観がかつてはいたるところにあった。その多くがより強固な消波堤としてのコンクリートに取り囲まれた海岸の景色へと変貌してきていた。そこへの東日本の震災による津波被害。より強固な高いコンクリートの壁の建設がさらに進む。しかし一方では海岸線の飛砂防備保安林が津波の強度を和らげたとのデーターも積み上げられている。この林は自然そのものではなく人の知恵、手によってつくられてきた文化景観であり、その維持には一定の管理が必要である。農用林としてのかかわり方が薄れ、単一の松林であったものが、様々な要因による松林の樹勢の衰えに伴い広葉樹が侵入し、植生の遷移が進む。人の営みの形が変わることにより自然へのかかわり方が変わってきているのである。提案されている飛砂防備林の在り方は、次の時代における人と自然の関わり方の普遍的問いへとつながる模索である。取り組んだ対象への問題意識への姿勢を評価したい。(岡田憲久)
●高校の部
<講評> 明石駅の南にある堤防で囲われた明石港の入り江内に、案合・敷地計画平面図からは計画地の大きさ、計画地の形状が判読しにくいが、計画地を設定していると思われる。 基本的な考え方として、タネから森を育てることで、街と森と海を繋げる。すなわち地域とつながる海の森のゾーンである「1Fエントランスと1Fシアタールーム+2F体育館」の次に、アイデアとつながる海の森のゾーンである「1Fに図書館+2階に屋上庭園」と森のゾーンと学校とつながる海の森のゾーンである「1Fに学校+2Fに宿泊施設」の次に、漁港とつながる海の森のゾーンである「1Fレストラン+2F体育館と1F歴史学習室+2F水族館」が配置された計画である。 高校部門において、複合的な用途、空間に対する地域環境提案が少ない中で、明石駅と「中央の森を囲むように地域とアイデアと学校と漁港のゾーンが配置され」これらが海に繋がり、複合的環境が形成され、「街と森と海」の繋がりを重視し、豊かな地域環境文化が創成されている全体計画の構想案を評価した。 (加藤和雄)
佳作
●住空間部門
●商業空間部門
●公共都市空間部門
●公共都市空間部門
●高校の部
特別賞
●アイデア賞
●中京エクステリア協会賞
●東海エクステリアフェア実行委員会賞
≪応募概要≫
A.住空間のエクステリア部門 8作品
B.商業空間のエクステリア部門 5作品
C.公共都市空間のエクステリア部門 21作品
D.高校の部 4作品
合計 38作品
ご応募いただいた皆様、大変ありがとうございました。
≪審査概要≫
1次審査
日時 2023年3月18日(土)14時~17時
会場 CBCアネックスビル7階 会議室
審査員 ● 堀越哲美 氏 《審査委員長》
(都市環境プランナー、博士(工学))
● 岡田憲久 氏 
(名古屋造形大学 名誉教授、ランドスケープデザイナー、景観設計室タブラ・ラサ主宰)
● 加藤和雄 氏
(椙山女学園大学生活科学部生活環境デザイン学科・教授、博士(工学)、一級建築士、インテリアデザイナー・建築家)
審査方法 各審査員が投票及び協議の上、最優秀賞、優秀賞、佳作、アイデア賞を選出
2次審査
日時2023年3月24日(金)14時~15時30分
会場ウィンクあいち 1206会議室
審査員 東海エクステリアフェア実行委員会(16社16名)
一般社団法人中京エクステリア協会(2名)
審査方法 実行委員会賞を各審査員による投票を行い最多得票作品を選出
中京エクステリア協会賞は2名の審査員の協議により選出
 

Copyright © 東海エクステリアフェア実行委員会 All rights reserved.

TOP